海老名市本郷の住宅街を抜けた先に静かに佇む樹齢350年以上の巨樹「有馬のはるにれ」。
観光地ではなく工場や民家が並ぶ地域の中にありながら、まるでパワースポットのような場所です。

地元にこんな場所があるとは知らず、一度見てみたいと思い家族で足を運んでみることにしました。
最寄り駅はJR相模線の社家駅ですが、駅からは少し遠い場所にあります。
バスをご利用の場合は、海老名駅東口から「恩馬ケ原」方面行き又は「変電所北」方面行きのバスで訪れることができます。
県指定天然記念物「有馬のはるにれ」
有馬のはるにれは、樹齢350年以上とされる「県指定天然記念物」です。地元住民には「なんじゃもんじゃ」の名で親しまれています。

樹高16m、幹周り約6.8m、根周り約13m。
海老名に、こんなにも大きくて、こんなにも静かにそこに立っている木があることを、最近まで知りませんでした。
向かう途中は、ふだん見慣れた住宅街。特別な観光地という雰囲気はまったくありません。工場や普通の民家が並ぶ、どこにでもある風景です。
「本当にこんなところに巨木なんてあるの?」とワクワク感を高めてくれました。
近くまで歩いていくと、一目で「これだ!」と分かるほどの存在感のある大きな木が目に留まります。
大人が数人で手をつないでも回りきれないほど太い幹。空に向かって力強く広がる枝。
写真で見るよりも圧倒されるスケールで、思わず立ち止まって見上げてしまいました。
ただそこに立っているだけなのに、長い年月を感じさせる重みがあり、しばらく見上げたまま動けなくなってしまいます。
周囲の住宅と比べると、その高さと枝の広がりがいかに大きいかがよく分かります。
江戸時代から続く”なんじゃもんじゃ”の物語

はるにれの歴史を調べてみると、江戸時代、徳川家光公に仕えた御殿医 半井驢庵(なからい ろあん)が朝鮮半島から苗を持ち帰り、自身の屋敷の門の左右に植えたうちの一本かという話が残されています。
当時はとても珍しい木だったため、木の名前が分からず地域の人々からは”なんじゃもんじゃの木”と呼ばれていたそうです。木の名前ではなく”なんじゃもんじゃ”。
なんじゃもんじゃの呼び名ですが地域で普段見ない珍しい木のことで、初めて見たときの驚きや不思議さをよく表している気がします。
現在残っているのは2本のうちの1本で、もう1本は残念ながら失われてしまったとのこと。それでも、この1本が今も元気に生き続けていることに、なんだか感動を覚えました。
歴史を感じさせるはるにれの幹の内部は、長い年月で空洞ができていますが、雨水の浸入を防ぎ、樹幹内部を補修するなど、丁寧な手当てが施されています。
過去には樹幹内部の修理のほか、幹への負担を減らすために伸びた枝の剪定等の手入れが定期的におこなわれてきました。

行政と地域の人たちに見守られながら、今も力強く生き続けている姿に、自然への敬意のようなものが湧いてきました。何百年も前からこの土地を静かに見守ってきたんだろうなと、想像するだけであたたかな気持ちになります。
木の下で過ごす、ゆったりとした時間

大きな木のそばにいるだけで、なぜか心が落ち着くことってありませんか?
家族と一緒に木の下に立った時、ちょっとした会話が生まれました。うちの家族には「木」にまつわる名前の人がいて、みんなで「なんだか木のパワーを分けてもらえそうだね」と笑いながら見上げたんです。
そこで過ごす数分が、家族とほっこりする時間になる。そばにいるだけで、心が落ち着いていく。
子どもたちは木の幹に触れて「硬い」と驚き、しばらく見上げていました。こういう体験は、博物館や植物園とはまた違った、生きた自然との出会いです。
特別な入場料も予約も必要なく、ふらっと訪れて、木の前に立つだけ。それだけで心が豊かになる気がします。
地域に守られる巨樹、これからも
有馬のはるにれは、いわゆる観光スポットではありません。生活のすぐそばにある、ただそこにいる存在なのです。特別な設備があるわけではありませんが、その素朴さが魅力で、時間がゆっくり流れるように感じられます。
忙しい毎日の中で、立ち止まる時間をくれる貴重な場所です。

これまで何度も通ってきた道の近くに、こんな歴史ある巨樹が静かに佇んでいたことに驚きつつ、やっぱり海老名にはまだまだ知らない魅力がたくさんあるんだと実感しました。
地元の中に眠っている”いいもの”を見つけていくのは、本当に楽しいです。観光地として整備された場所もステキですが、こうした日常の中にひっそりと存在するような場所には、また違った良さがあります。

名の知れたスポットではなくても、心を整えてくれる場所はすぐそばにあるかもしれません。
日常を少し離れて深呼吸したくなったら「有馬のはるにれ」に会いに行ってみてください。
「有馬のはるにれ」
住所:神奈川県海老名市本郷3881
アクセス:JR相模線「社家駅」から徒歩約40分
【バス】 相鉄本線/小田急線/JR相模線「海老名駅」から相鉄バス「ハマキョウレックス」行き乗車「変電所北」下車徒歩約2分 または神奈中バス「長後駅西口」行き乗車「根恩馬」下車徒歩約12分
駐車場:なし





















